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嫉恋

第11章 不穏な空気




花織は黙っていることを選んで風丸には吹雪との話を誤魔化した。だが風丸は彼女が何かを隠していることを悟った。彼女の一瞬の表情、吹雪の様子を窺った時点で何か自分に隠していると確信できた。でも彼女は何故、自分に隠し事をするのだろうか。後ろめたいことが、あるのだろうか……。

「だったら戻ろうぜ。……花織の姿が見えなかったから心配だったんだ」
「えっ、探しに来てくれたの?」

花織は驚いたような顔をした。そして少し嬉しそうに風丸に微笑んでみせる。風丸はぎゅうと胸が締め付けられるような感覚に陥った。いつもと変わらないじゃないか、花織が隠してる何かは俺の勘違いなのだろうか。そう思うくらい彼女の表情は素直だった。

「ありがとう、一郎太くん。……吹雪くんも一緒に戻ろう?」

だが花織はそこで吹雪のことを気に掛けた。風丸は吹雪を振り返った花織越しに吹雪のことを睨んだ。……やっぱり何かあるのだろうか、風丸は疑心暗鬼になっていた。吹雪は自分が風丸に向けられた視線を受けて花織の言葉に首を振る。

「僕はもう少しここに居るよ。花織さんと風丸くんは先に戻ってて……」
「わかった。戻るぞ、花織」

半ば強引に花織の腕を引っ張り、風丸はもう一度牽制するように吹雪を睨んだ。吹雪はその表情に困ったような表情を見せる。そして胸のうちでは明らかに自分が落胆しているのを感じていた。

吹雪が自分をわかってくれると可能性を感じていた花織に、相談できない理由は風丸だ。風丸は花織さえ絡まなければ吹雪に良くしてくれる優しい人物なのだが、花織が絡むとどうにも吹雪に敵対心を感じているようだった。それは吹雪の中にある花織に対する特別な気持ちに気づいての事だろう。今までも吹雪が花織に話しかけようものなら即座に気に入らない様子を見せていた。

今回もそうだ、今にも吹雪を睨み殺しそうな勢いで睨んで半ば強引に花織を連れてこの場を去った。

……花織さんには言えない。

吹雪はまた一つ、自分の気持ちを吐き出す術をここで失ったのだ。彼自身が壊れてしまう前に。
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