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嫉恋

第9章 精神の崩落




今までの試合でこれほどまでに後味の悪い試合はあっただろうか。あの後、潜水艦は爆破、沈没し影山は警察の手から逃げたようだった。佐久間と源田は正気に戻ったが、怪我が酷く、救急車で病院に搬送されていった。

その日の夕方、雷門中へ戻る道のりは重苦しい空気だった。その中でも花織が気にかかっていたのは鬼道の事だった。あんなことがあったから当たり前なのだが、鬼道は酷く落ち込み、悲痛そうにキャラバンの中でも両手を握りしめていた。今、この夕食の時間も彼は”食欲がない、一人にしてくれ”といってキャラバンから降りてこようとはしなかった。

「……」

花織は食事をしようとする手を止める。やはり食事よりも鬼道のことが気にかかった。傍にいた吹雪が花織に声を掛ける。

「花織さん、食べないの?」

皆、暗い雰囲気を消そうと無理に明るく振る舞い食事を摂っている。でも花織は彼が気がかりで堪らなかった。鬼道は何もかも一人で抱え込んでしまう、それは以前の出来事から花織は知っている。花織は吹雪の問いに頷き、立ち上がる。

「鬼道さんが気になるの……。少しキャラバンに行ってみる」
「花織」

隣に掛けていた風丸が花織の名を呼ぶ。行くな、とは言えなかった。花織に鬼道の元へ行ってほしくはなかったが、そうすれば花織を困らせるだろうし、何より了見の狭い男だと思われてしまうだろう。だから彼は押し黙った、みすみす彼女が以前想っていた男の元へ向かうことに何も言えなかった。

「何でもない。……鬼道を頼むな」

風丸は微笑んでみせる。すると花織は少し安堵したようにその場を離れて行った。彼の寂しそうな色に気づくことなく。
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