第4章 雪原の皇子
「そういえば花織さん、サッカーするんだね。マネージャーだって言ってたから驚いたよ」
「今は人数が足りてないから私が一応。……元々、運動が好きですのでサッカーは少しくらいならできますし」
「少しなんてものじゃ無かったよ。凄く上手だった。あと……」
吹雪が花織の肩に積もった雪をさっと払いながら微笑む。
「君の走る姿、とても綺麗だった」
吹雪は花織の走る姿を試合中に見ていた。桃色の頬、真剣な目、揺れる髪、すらりとした肢体。試合中だというのに彼女に一瞬目を奪われた。キャラバンで自分を助けてくれた少女とはまるで別人のように思えた。そう見えたのは彼女が髪を結んでいたからかもしれない。だが、走る彼女を見惚れてしまうほどに彼女を美しいと思った。
そして今、雪の中でひとり佇む花織も、彼の心を震わせた。たったひとり、街灯の元で舞い落ちる雪を掌に受けるその様子がとても神秘的だった。吹雪は今まで感じたことの無い感情を花織に対して抱いていた。彼女と話をしているだけで妙に高揚した気分になる。いつもより心臓の鼓動を強く感じていた。これがなんなのかは定かではない、だが単純に花織をもっと知りたいと吹雪は思ったのだ。
「そう、ですか。……元陸上部ですし、そう言って頂けると嬉しいです」
走る姿を褒められることに関しては満更ではなかったようで、花織は少し頬を桃色に染めて横髪で顔を隠した。やはり元陸上部だからだろうか、フォームを褒められるというのは凄く嬉しいことだ。吹雪はそんな花織を見ながら柔らかく笑う。
「花織さんは可愛い人だね。……それにすごく優しい」
「……えっ?」
「ふふ。これからよろしく、花織さん。君とは仲良くしたいな」
微笑と共にすっと吹雪の白い手が花織の方へと差し出された。どうやら彼は花織に握手を求めているようだ。花織は彼の顔と手を交互に見比べる。……話してみた感じ、不思議なところはあるようだが、思うよりも接しにくい人ではないようだ。花織は吹雪の手に自らの手を重ねる。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
花織はそう言って彼に笑い掛けた。