第7章 宿泊時のお約束
そのあとバスに揺られること30分。
『やっとついたぁ。』
俺達が今夜泊まる旅館【紀伊】に着いた。この【紀伊】は純和風な旅館で規模も結構大きい。しかし山奥にあるのであまり知名度は高くないらしい。
さっそくバスを降り、荷物を持って【紀伊】に入った。
中に入ると女将さんらしき人がホールで待っていた。
『ようこそいらっしゃいました。ヘルマン様にアーダルベルト様。女将の千尋と申します。長旅でさぞお疲れでしょう。部屋にご案内させてもらいます。』
千尋さんはそう言うと俺達を部屋に案内してくれた。廊下の窓からは遠くに小さく街の明かりが見えた。
『それにしても今日は不思議な日ですね。』
千尋さんがポツリと言った。
アーダルベルトが目を少し細めながら千尋さんに聞いた。
『どうしてですか?』
千尋さんはふふっと少し笑いながら答えてくれた。
『今日は何故か兵隊さんがいっぱい泊まりに来るんですよ。しかもヘルマン様のことを知っていて•••』
俺は唾をゴクリとのんだ。
オスヴァルトたちに違いない。どこまで俺達を追いかけるつもりなんだ。その無駄な能力を俺に使わず祖国に使えよ。