第2章 女泣かせの糸(高杉甘裏)
晋助さんはあたしの顎を引き寄せ、唇を重ねた。
「ん……」
割られた唇から舌が入り込み、口の中を犯していく。
あたしはその舌に自分のそれを必死でからめた。
その舌さえも簡単に吸われてしまう。
頭がしびれるような快感。
身体の芯についた火が燃え上がるように。
呑み込みきれなくなった唾液が口の端から落ちても、あたしたちは離れようとしなかった。
どのくらいそうしていたのだろう。
やっと唇を離すと、二人の唇から垂れた唾液が橋を作った。
「艶っぽいもんだな」
晋助さんはあたしの顎を持ったまま、親指で唇を撫でた。
でもあたしには、紅が移ってしまった晋助さんの紅い唇の方が、よほど艶っぽく見えた。
手の甲でその唇を拭う姿も艶めかしい。
あたしは唇を撫でる晋助さんの親指に舌を這わせた。
「んっ、む……」
晋助さんはそんなあたしを目を細めて眺め、
「おいおい、そんなに煽るなよ」
と笑みを浮かべた。
「少しずつ口説く客が好きなんじゃねえのか」
「……っ、今まで、……十分焦らしてきたじゃ、ありいせんか……」
「……そうか、そうだな」
そう言うと、晋助さんはあたしの身体を抱き上げた。
そんなに身体が大きいとは思わなかったのに、あたしの身体は軽々と抱き上げられてしまった。
「焦らすのも焦らされるのも、そろそろ限界だ」
獣のような目が、あたしを見下ろしていた。