第1章 甘い野獣(銀時甘裏)
「あれ、神楽ちゃんと新八くんは?」
「今日は、ババアが焼き肉おごってくれるって、喜んでついてった」
「え?二人の分もあるのに」
「大丈夫、代わりに銀さんがもらっとくから」
「だめよ、銀さんの分は銀さんの分」
「ちぇーー」
ソファーに腰を下ろした彼女に声をかける。
「なあ、美咲ちゃん、メシ食った?」
「ううん、仕事から直行したから食べてないの。帰ってから食べよっかなって」
オイオイ、ここまで来ておいて帰るつもりかよ?
まあ、そんなこと、絶対にさせないけど。
「じゃあさ、オムライス食べる?」
「え?」
「俺もメシまだなんだ。せっかくなら、一緒に食わねえ?」
獣を飼い慣らした笑顔を向けると、彼女は驚いた顔をする。
「そんな……チョコレート渡しに来たのに、ごちそうになるなんて悪いわ」
「一人分も二人分も大して変わらねェよ。気にするなって」
俺はそう言うと、台所に入り、フライパンに卵を落とした。
え?手際よすぎ?
当たり前だろ?
美味しいモンを美味しくいただくために、準備は万端なんだって。
ほどなくして並べられたオムライスの皿。
我ながらかなり上出来だ。
「どう、美咲ちゃん、これでも食べていかない?」
彼女は苦笑した。
「ううん、こんな美味しそうオムライスを目の前にして、食べていかないなんて無理だわ」
だろ?
だけどな。
このオムライスなんかより、アンタの方がよっぽど美味そうだぜ。