第1章 甘い野獣(銀時甘裏)
コンドームに手を伸ばそうとした俺の腕を、美咲がつかむ。
「ん?どうした?」
「あ、あの……」
「ん?」
「銀さん……あの……、あの……私……ピル飲んでるから、コンドームしなくても、大丈夫」
マジで?
えーっと。
これもやっぱり元彼の影響だよなあ。
もしかして、まさかとは思うけど、ろくに避妊もしない男だったってことだったりする?
生でできるのは嬉しいけど、ちょっと複雑な気分……。
でも。
少し思い直す。
元彼のために飲んでたんだったら、別れてすぐやめればいいんだし、ストーカー化した元彼から万が一襲われたときのために飲んでいたのだとしても、その危険は既に去ってるんだから、やめたっておかしくない。
それなのにまだ飲んでるってことは、避妊のためじゃなくて、生理不順の治療とか、そういうことのために飲んでるのかもしれない。
もしくは……。
俺にとって、すげえ都合のいい考え方だけど。
もしかして、
もしかして、
俺とセックスするの、ちょっとだけ、期待してた?
だめだ俺。そんなこと思いついたら、顔がニヤついて止まらねえ。
「ねえ美咲、銀さんと生でセックスしたいって思って、ピル飲んでくれてたの?」
彼女の顔が一気に赤くなった。
否定しないね?
「ごめんなさい……」
恥ずかしそうに、美咲が俺の腕の中で身をよじって逃げ出そうとする。
ちょ、ちょっと待てって。
どうして逃げるの?
逃がさねえよ?
ソファだから逃げられねえし。
それに俺は、御主人様に忠実な犬っころとは違う。
「待った」かけられても、獣には通用しないぜ?