第1章 甘い野獣(銀時甘裏)
「美味しい?」
「うまいな。アポロと同じチョコレートとは思えねえ」
「ふふっ。アポロはアポロで美味しいけどね」
「美咲ちゃんも食べる?」
「そんな……いいわよ、銀さんが全部食べて?」
「いや、せっかくなら二人で味わおうぜ」
「でも……」
「いいって、ほら」
俺はまた一つチョコレートを口にする。
「美咲ちゃんも食べて」
「……じゃ、じゃあ」
おずおずとチョコレートに伸ばした美咲ちゃんの腕をつかみ、ぐっと引く。
「えっ」
不意をつかれた彼女の身体は俺の腕の中だ。
「銀さん?」
何が起こったのかわからない様子で、俺の顔を見上げるその表情。
悪いけど。
罠にかかったら、もう逃がさねえよ。
「そっちじゃなくて、こっちのチョコだって」
俺は片手で顎を持つとチョコレートを口に入れたまま、彼女に口づけた。
驚いて固まった彼女の唇の隙間からチョコを押しやると、そのまま舌を口の中に入れ、チョコごとなめ回す。
「ん……っ」
チョコより甘い口づけ。
俺の理性も溶けていく。
好きなモンと好きなモンを組み合わせたら、美味いに決まってるよな。
チョコが全て溶けてしまっても、俺は唇を離さなかった。
舌をからめ、甘噛みし、チョコと混ざった甘い唾液が口の端からこぼれるのもかまわずに。
唇を離すと、チョコで犯された唇と、とろんとした瞳が目の前にあった。
ああ、獣の前でそんな顔しちゃって。
美味しくいただかれちゃうぜ。