第1章 甘い野獣(銀時甘裏)
翌朝目を覚ました時、目に飛び込んできたのは銀色の髪の毛だった。
一瞬何が起きたのかわからなかった。
だが、頭が冴えてくるのに従って、状況を把握できてきた。
銀さんが半纏を着て、私のベッドにもたれかかるようにして寝ていた。
私の手をずっと握ったままで。
私が寝ている間ずっと、こうやって私のそばにいてくれたのだ。
熱の下がった私の頭は、冷静な判断を下せるようになっていた。
私はもう、銀さんに会わないようにしなくちゃいけない。
銀さんの顔を見ると、期待してしまうから。
私が身体を起こすと、銀さんは目を覚ました。
「起きた?」
「銀さん、ずっといてくれたのね」
「当たり前だろ、弱ってる美咲ちゃん置いて帰ったりできねえって」
その笑顔がまぶしすぎる。
「……」
「腹へったんじゃね?おかゆ作ったから食えよ」
「そんなことまでしてくれたの?」
「そ。万事屋銀ちゃん、いい仕事するだろ?」
銀さんのおかゆは、本当に美味しかった。
美味しくて美味しくて、幸せすぎて、涙がこぼれた。
「え?どうしたの?熱かった?」
「ちがう……ちがうの」
銀さんは少し困ったような顔をして、私の頭をよしよし、とするようになでた。
「銀さんにこんなことまでしてもらって、報酬はどのくらい払ったらいいの?」
「報酬?」
「とにかく実費は払うわ。いくらかかったのかしら……」
だが、銀さんの申し出は意外なものだった。
「いや、それはいいからさあ、バレンタインデーにチョコくんねえ?」
「え?」
「銀さん、定期的に糖分入れないとダメな体質なんだよね。バレンタインデーに美咲ちゃんからチョコもらえたら、それでいいかなって」
「そんな……」
「ただし、高級チョコで頼むぜ」
そうね。
バレンタインデーにチョコレートを渡しに行く。
それできっぱり終わりにするのだ。
この関係を。