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【呪術】白蛇は胡蝶蘭に恋をするか【禪院直哉】

第6章 漆



食べかけの膳を残して、部屋を出た


さっきまでの重苦しい静けさと、
あいつの気配が一気に遠のく

屋敷を後にして、直哉は足を止めない。
砂利を踏む音がやけに大きい。

苛立ちはまだ残っている。

胸の奥がざらついたまま、落ち着かない。

(……何やねん)


さっきのの横顔。
指先が止まった瞬間。

飲み込まれた声。

それでも何も言わなかった。

戻らないと言う意味は、わかるはずや



男が離れれば
泣くなり、引き止めるなり、何かある。

それが“女”や。

なのに、あいつは……。








本当のところ、予定などない
ただ、試す為にそう言っただけだ。


がどんな顔をするのか、それがみたかったはずだった。

仕掛けたのは自分なのに、足が奥が重い。

(放っとけばええ)

そうや。
戻らんと言うたなら、本当に戻らんでもええ。


俺が他の女を抱ても平気やって顔しとったんやから

顔も見せず、
隙も見せんと。

それが一番、腹立つ。

俺が揺らしたはずやのに。

なんであいつの方が、澄ましとる。

なんで俺の方が、こんなに落ち着かへん。


胸に溜まった熱が、うまく逃げない。

(……戻ったら、どうなる)

一瞬だけ思う。

夜、何も言わずに家に戻れば
あいつは、どんな顔をする。

またあの一瞬の動揺を見せるか。

それとも…


考えている時点で、苛立ちが増す。

(……くだらん)

女一人の反応を、何でこんなに気にしなあかんのや。

直哉は大きく息を吐く。

「……鬱陶しい」

小さく吐き捨てる。

誰もいない外で。

でも本当は、
置いてきたはずなのに。
足は屋敷から遠ざかっているのに。



意識だけが、まだあの部屋に残っている。

顔も見せないあいつの姿を、無意識に想像している自分が
何より、腹立たしかった。
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