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【呪術】白蛇は胡蝶蘭に恋をするか【禪院直哉】

第6章 漆




夜は、こんなにも長かっただろうか。



は針を止め、灯りの下で静かに瞬きをした。

屋敷の夜は、音が少ない。
風の音と、どこか遠くの軋みだけ。

それなのに今夜は、そのどれもがやけに耳に刺さる。

夜はこんなにも静かだったのか、と
まるで初めて知るように思う。

時間を潰すものなど持ってきていない。
だからただ、裁縫をする。

布をすくい、糸を引き、またすくう。
単調な動き。

やがて瞼が重くなれば、そのまま眠るだけ。
それでいいはずなのに…
ふと、布団の先に指を伸ばす。

冷たい




当然だ。
最初から、私の隣には誰もいない。

直哉様はいつだって私の数歩前。
たとえ横に眠っていたとしても

そのことを驕ってはいけない




(……こんなに、人と触れなかったのは初めてかも)

実家も、定期的に訓練があった
望まなくても、人の体温は常にあって
それが当たり前



今は違う。

何もない。

静かで、自由で、
けれど……
はそっと耳を澄ませる。

足音がするかもしれない。
襖が開く音がするかもしれない。

「」

直哉の声を思い出す
自分を求める彼の声を



けれど夜は、ただ静かに過ぎていく。


胸の奥が、じわりと冷える。

彼に求められることが、自分の役目
直哉の役に立つ事でしか自分を証明できない



必要とされない事が、こんなにも空虚だとは。

ぽっかりと、穴が空いたような感覚。


これが
「寂しい」

というものかもしれない。


どんな小説も、
どんな音楽も、

この感情を教えてはくれなかった。

言葉では分からなかった。

ただ、夜の孤独だけが、
ゆっくりとを闇の淵へと近づけていく。
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