• テキストサイズ

【呪術】白蛇は胡蝶蘭に恋をするか【禪院直哉】

第6章 漆


その夜を境に、二人の歯車が微妙にずれた。

昼間は問題ない。

いつも通りの主人と世話役。
食事の支度も、部屋の整えも、寸分違わず完璧。

直哉も、いつも通りに振る舞える。
命じ、彼女の奉仕を淡々と受け取る
何も変わっていない

――はずなのに。

日が落ちると、自分の立ち振る舞い方が分からなくなる。

布団に入った瞬間、一人きりの静けさが重くのしかかる
目を瞑ればあの日のことばかり

腕の中で力が抜けた体
熱を帯びた瞳
安心しきった寝顔

(……なんや)


きっと今も変わらない。

の部屋の前まで行くことも、
を部屋に呼びつけることも。

命じればできる。
それなのに――できない。

一週間。

意地で我慢した。

触れなくても平気や。
呼ばなくても支障はない。

そう思い込んで。

だが、八日目の夜。

体が重い。
眠れない。

胸の奥がざわついて、どうにも落ち着かない。

(……くそ)

これは欲か。
ただの習慣か。


「……いまさら、どうせっちゅうねん……」

ぽつりと零れる。

あいつのままでいい。

確かに言った。

けれど――

あいつのまま、って何や。

黙って従う姿か。
感情を見せない態度か。
それとも、あの夜みたいに無防備に…

分からない。

(……俺は、何を求めとる)

女は従順であればいいと思っていた。

だが、あの安心しきった顔を思い出すたび、
胸がざわつく。

あれをまた見たいのか。

それとも、見てはいけないのか。

自分の感情が、思うよりずっと曖昧で。

命じれば戻れる。
前と同じ距離に。

だが、それをしたいのか、それさえも


「……分からへん」

小さく呟く。


夜がいけない。


答えが出ないまま、布団の上で目を閉じる。

腕の中は、今日も静かなまま
/ 109ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp