• テキストサイズ

【呪術】白蛇は胡蝶蘭に恋をするか【禪院直哉】

第6章 漆


直哉の布団に二人で横になる、湯上がりの匂いがやわらかく部屋を包む。
「……のぼせて……しまいました……」

布団の中で、申し訳なさそうに呟く声はかすれている。
瞳が潤み、焦点がわずかに揺れている。

直哉は片腕で彼女を支え、口元を軽く歪めた。

「弱いなぁ」

からかうような声音だが、刺はない。

は起きあがろうとするが、力が入らない。
結局また胸元に沈み込む。

「……ごめんなさい……」

弱々しく、震える声。

直哉は小さく鼻で笑った。

「水、飲み」

そう言いながらも、彼女の手に、ペットボトルを渡すと
コクコクと音を立てて飲む。

「……」

再び横になった彼女は
うつらうつらと瞼が落ちかけている。

「そなんな眠いなら、眠りや」

「んん……直哉様が……寝るまで……寝ません……」

掠れた声で、相変わらず頑なだ。

直哉は一瞬だけ黙り、ため息をつく。

「俺が寝たらええ、て言うてるやろ」

短く、いつもの調子で。

それでもは、ぼんやりと彼を見上げる。

「…うぅ」

直哉は答えず、ただ彼女の背を軽く叩いた。
一定のリズムで、ゆっくりと。

布団の中で、彼女の呼吸が少しずつ落ち着いていく。
熱に浮かされた体から力が抜け、完全に身を預ける。

やがて、静かな寝息が聞こえ始めた。

直哉は目を閉じない。
ただ、腕の中の軽い重みを感じながら天井を見つめる。

「……ほんま、手ぇかかるわ」

小さく呟き、彼女の髪を指先で梳く。

布団の中はまだ少し熱がこもっている。
けれど、彼女の体温はゆっくりと落ち着いていく。
腕の中の重みは、ひどく軽い。
それなのに、やけに存在感がある。

(……なんで俺が、こんなことしとんねん)

こいつはただの使用人。
放っておいてもよかった。
他の使用人にまかせれば済む話や。

それなのに、自分の部屋まで連れてきた。

額に触れたときの熱。
ぐらりと倒れてきた体。
申し訳なさそうに「ごめんなさい」と言う声。

胸の奥が、妙にざわついた。

弱い。
頼りない。
守る価値があるとも思えへん。

……はずやのに。

(……なんや、この感じ)

腹の底に、小さな違和感が残る。

/ 109ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp