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【呪術】白蛇は胡蝶蘭に恋をするか【禪院直哉】

第5章 陸




夜明け前の、最も静かな時間
直哉はふと、浅い眠りの底から引き上げられるように目を開けた。
視界に映るのは、薄闇と、腕の中にあるぬくもり。

――なんや…これ

一瞬、状況が掴めない。
だがすぐに、自分の腕がの背に回り、抱き込むような形で眠っていたことに気づく。

いつの間に、抱きしめていたのだろう。

女を腕の中に入れて眠るなど、いつぶりか。
いや、そもそも、眠りまで共にした記憶がほとんどない。
いつもは、行為が終われば距離を取る。
女を必要以上に近くに置いてこなかったのだから当然だ。

ゆっくりと身体を起こす。
ひやりとした空気が肌を撫でた。

何気なく視線を落とし――そして、止まる。

布団の一角。
さきほど自分が汚した跡。

途端に、脳裏に熱の残滓がよみがえりかける。

荒い呼吸。脊髄に染み込む快楽。
耳元で囁く歪んだ、甘い声。

「……っ」

思わず目を逸らして
思い出しかけた記憶を、強引に押し戻す。
あれは、衝動や。
ただの欲や。

ふと、視線が再び彼女へと戻る。

は、静かに眠っていた。
乱れた髪が頬にかかり、薄く開いた唇から穏やかな呼吸が零れている。

こうしていれば――

ただの、無垢な女に見えるというのに。

毎夜、自分を翻弄するあのしなやかな動きも、
息遣いの合わせ方も、
触れられるだけで熱を煽るあの間合いも、
この寝顔からは想像もつかない。
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