第5章 陸
夜はすぐにやってきた。
あらかじめ引いておいた布団の上にどかりと座って足を投げ出している直哉の斜め前で畳に膝をつく。
灯りを落とした部屋の中。
は端に座ったまま、指先で絹の縁をそっと撫でていた。
(せっかく新しい部屋にしてもらったのに……
汚してしまうのは…)
そんな考えが頭をよぎって、胸が少しざわつく。
直哉は隣で目を閉じかけていたが、
彼女の小さな息遣いに気づいたのか、片目だけを開けた。
「なんや? まだ起きてるんか」
は慌てて首を振る。
「……いえ。
ただ、ちょっと……」
言葉を濁す彼女に、直哉は体を起こして肘をついた。
「どうしたん」
は頰をほんのり染め、視線を落としながら、
小さな声で続けた。
「直哉様に、喜んでいただきたいけれど…
……でも、この布団、せっかく新しくしていただいたのに、
もし汚してしまったら……申し訳なくて」
直哉は一瞬、ぽかんとした顔をした。
それから、くっと喉の奥で笑いを漏らす。
「はぁ? そんなことで悩んどったんか」
彼は体をずらし、の顎を軽く指で持ち上げて顔を上げさせた。
「部屋のことなんか気にせんでええ。
汚れたらまた新しいん用意したるし
そんなんより、お前が今、…俺に何しようとしてるんか、そっちの方が興味があるわ」
の瞳が揺れる。
直哉はさらに顔を近づけ、耳元で囁くように言った。
「…お前の価値、ちゃんと見せぇよ」
彼はそう言って、再び布団に体を沈めた。
両手を頭の後ろに組み、
まるで王様のようにくつろいだ姿勢で、
をじっと見つめている。
「さぁ、どうする?
今夜は、お前の好きにさせたるから」