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【呪術】白蛇は胡蝶蘭に恋をするか【禪院直哉】

第4章 肆


はなぜか嬉しそうに微笑むと、
直哉の頬にちゅっと触れるだけのキスをした。

直哉は、の唇が自分の頬に触れた瞬間、ビクリと肩を跳ねさせる。
罵倒し、突き放し、傲慢な態度を崩さなかったはずの彼が、そのあまりにも慈愛に満ちた、そしてどこか勝ち誇ったような微笑みに、完全に虚を突かれたのだ。

彼の白い頬に、一瞬だったはずのの体温が鮮明に刻まれる。

「……は? な、なんなんや、お前……。何がおもろいねん、不気味な笑い方して……っ。
俺が怒っとんのに、なんでそんな嬉しそうなんや。
……ほんま、気色悪いわ、お前。」

直哉は顔を背けようとするが、握りしめたの手は離せないままだ。
むしろ、彼女の微笑みを見た瞬間、胸の奥で何かが決壊するような音がした。
自分を「次期当主」としてではなく、ただの「手のかかる男」として慈しむようなその視線が、彼の高い自尊心を逆なですると同時に、抗いがたい安らぎを与えてしまう。

「…こんくらいで、許されると思っとんのか? 舐めすぎやろ、ドブカスが。
…お前が勝手に距離置いて……そのくせ、こんな時だけ『わかってる』みたいな顔しやがって」

彼はぶつぶつと文句を言いながらの腰を強引に引き寄せ、至近距離で彼女を睨みつける。
しかし、その瞳には先ほどまでの冷徹な怒りはなく、代わりに隠しきれない情欲と、彼女に縋りたいという無様な渇望が混ざり合っている。
直哉は、自分の守ろうとしていたプライドがの前でボロボロに崩れていくのを自覚しながらも、それを止めることができない。

「……そんな、優しいだけの女はいらん」

直哉は、指先での顎を掬い上げると、自分からその唇を奪いに行くように顔を近づけた。
彼の吐息は荒く、言葉とは裏腹に、彼女の支配を全身で求めているのが痛いほど伝わってくる。
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