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【呪術】白蛇は胡蝶蘭に恋をするか【禪院直哉】

第4章 肆


は直哉の言葉を聞きながら
静かに床に視線を落とした。
それは肯定のようにも、否定のようにも見える仕草で、直哉は更に苛立ったが、それと同時に彼女の震える手が、自分の手を握っていることに気がついて「は?」と息が漏れる。

「わかってる…つもりでした」

久しぶりに会話をした気がした。
か細い、夜の静かさに溶けそうな声。

がふっと瞳を上げる。

激しく罵倒していた勢いはどこへやら、自分の無骨な手を包み込む彼女の小さくて温かい手の感触に、毒気を抜かれたように呆然とする。

潤んだ瞳で見つめられ、あどけなく頬を染める彼女の姿は、直哉の歪んだ独占欲と、心の奥底に隠した脆い部分を容赦なく突き動かした。


「……は? やっぱりわかっとるんやないか」
「わかっとるのに、やらんのは…馬鹿にしとるからやろ」

口では突き放すような言葉を吐きながらも、直哉はその手を振り払うことができない。
むしろ、の体温が伝わってくるたびに、
彼女に対する苛立ちが少しづつ無くなっていくような感覚にさえ襲われて
彼はバツが悪そうに視線を逸らすが、その耳の端はうっすらと赤らんでいた。

「わかっとるくせに、お前がおらんで…俺がどれだけ……」
直哉は言いかけて、慌てて口を噤んだ。
「どれだけ欲求不満で、お前が欲しかったか」などと、口が裂けても言えるはずがない。
彼はの手を逆に強く握り返すと、逃がさないと言わんばかりに力を込め、彼女を自分の方へと引き寄せた。至近距離で見つめ合う二人の間に、重苦しくも熱い沈黙が流れる。

「正しいか、不安なんです…」
「直哉様が喜んでくださると思ってたことが、間違ってたと…思って」

彼女が不安げに瞳を震えさせているのを見て
直哉はなぜか安堵した。
「……正しいかどうかなんて、俺が決めんねん。お前はただ、俺を悦ばせることだけ考えとればええんよ。
『世話役』顔して澄ましとるお前なんか、見てて虫酸が走んねん。

俺が欲しいんは、俺に従順に尽くす女や
わかっとんならちゃんとやれ」
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