第1章 壱
向かい合って座ると、直哉は片肘をつき、を値踏みするように眺めた。
薄く笑ったまま、軽い調子で口を開く。
「それで?」
「どないな世話、してくれるん?」
は背筋を正し、視線を落としたまま答える。
「お食事や、任務の準備のお世話です
直哉様はお忙しいお立場ですし……次期当主になられる方ですから」
その言葉に、直哉はわずかに目を細めた。
薄ら笑いを深め、満足したように小さく頷く。
「まぁ確かに、俺は任務で忙しいな」
「当主ともなれば、今の数の使用人じゃ足らんわ」
そう言ってから、楽しむように言葉を重ねる。
「で?」
「ちゃんも、俺に尽くせるんは光栄やと思っとるんやろ?」
胸の奥がひくりと鳴ったが、は迷いなく答えた。
「もちろんです」
「私は禪院家に仕える身として育てられてきましたから」
直哉はその返事を聞き、口元を歪めたまま、ゆっくりと頷いた。
「せやろな」
「禪院家に仕えるっちゅうことは
俺に尽くすんは、当然の務めやろ」
どこか褒めるような、けれど突き放すような声音。
「よう分かっとるやん
賢い子やなぁ、ちゃんは」
言葉は柔らかいのに、逃げ道はない。
はただ、静かにそれを受け取った。