第3章 参
日付を跨ぐ頃、禪院家の奥まった一角は静まり返っていた。
突然、足音が荒く廊下に響き、の部屋の襖を乱暴に開け放つ。
直哉が部屋に踏み込むと、風呂上がりの彼女がちょうど髪を拭いている最中だった。
薄い浴衣一枚、濡れた黒髪が肩に張り付き、湯気の残る肌がほのかに上気している。
が振り返り、目を見開く。
驚きの声すら出ないまま、直哉の腕が彼女の肩を掴んだ。
そのまま畳の上に押し倒す。
浴衣の裾が乱れ、滑らかな太ももが露わになる。
「…っ、直哉様…?」
小さな声が震えた。
直哉は彼女の上に覆い被さり、荒い息を吐きながら睨みつける。
「手ぇ貸せ」
短く、命令するように言った。
は一瞬だけ目を伏せ、すぐに理解した。
ゆっくりと頷き、抵抗せずに身体を起こす。
直哉を落ち着かせるように、そっと彼の腕を掴んで座らせた。
近くに置いてあった急須から茶を注ぎ、湯呑みを差し出した。
「…どうぞ」
直哉は無言で受け取り、一気に飲み干した。
ぬるくなった安い味だが、苛立ちを少しだけ和らげる。
空になった湯呑みを畳に置き、彼はの顔をじっと見つめた。
殴った頬に、まだ薄い赤みが残っている。
見つめていると
の手のひらが、そっと胸元に触れた。
長いまつ毛が静かに瞬く。そして、触れるような口付けが施された。
最初は軽く、探るように。
やがて深く、溶けそうなほどねっとりと絡み合う。
「……ん…」
の小さな吐息が漏れる。
直哉の舌が彼女の口内を侵し、甘い唾液を絡め取る。
キスに溺れるように、直哉の身体がわずかに震えた。
彼の腰が無意識に動き、そそり立った自身を彼女の太ももに強く押し付ける。
浴衣越しに伝わる熱と硬さが、の肌を熱くする。
直哉は唇を離さず、片手で彼女の腰を引き寄せた。
太ももに擦りつける動きが次第に激しくなる。
不完全燃焼の苛立ちが、再び下腹部に火を灯す。
「…お前の所為や」
掠れた声で呟きながら、再び唇を奪う。
は抵抗せず、ただ静かに受け入れた。
彼女の指が、直哉の背中にそっと回される。
その温もりが、直哉の苛立ちを、ゆっくりと別の熱へと変えていく。