第3章 参
頭の中にの声が響く。
「……直哉様」
小さく、控えめに、鈴が鳴るような、風がならす風鈴のような音。
あの声が喘ぐのを聞くのは酷く心地がいい。
「っ…クソ…きばりや…」
呟きながら、速度を上げる。
腰が勝手に浮き、畳を擦る音がする。
想像の中で、は俺の下にいる。
俺が彼女の頬をもう一度叩き、怯えた顔を見下ろしながら、乱暴に腰を打ち付ける。
彼女の細い腰を掴み、逃がさないように固定して、奥まで抉るように突き上げる。
なのに、なぜかイケない。
頂点が、すぐそこにあるのに、届かない。
「はぁ……っ、はぁ……っ」
息が上がる。
拳が速くなる。
先端がびくびくと脈打ち、限界が近いはずなのに――来ない。
苛立ちが、快感を上回る。
もう、ただの作業みたいだ。
「……っくそ……無理や…」
最後に強く握りしめ、根元から先端まで一気に擦り上げる。
熱いものが少しだけ迸るが、勢いはなく、ただだらしなく零れるだけ。
不完全な射精。
体は震えるのに、心は満たされない。
余韻すら、薄い。
「……はぁ……はぁ……」
荒い呼吸だけが部屋に響く。
直哉は畳に仰向けに倒れ込み、天井を睨んだ。
手に残る感触は、もう冷めている。
下腹部の疼きだけが、じりじりと残る。
「……ほんまにクソや」
誰に向けたでもなく、ただ吐き捨てるように呟いた。
まだ、身体の熱は冷めない。
イケなかった苛立ちが、胸の奥で燻り続けている。
の顔が、頭から離れない。
振り払うように直哉は目を閉じた。