第3章 参
力加減など考えていなかった。
考える余裕すらなかった。
ただ、衝動的に腕が動いていた。
は一歩よろめき、目を見開いたまま固まる。
何が起きたのか、理解が追いついていない様子だった。
やがて、ゆっくりと状況を飲み込んだのか、彼女は視線を伏せた。
「……申し訳ございません」
震えた声ではなかった。
泣きもしなかった。
殴られた理由を、自分の落ち度に求めるその言葉。
「今日はもう、顔みせんな」
それだけ言い捨てて、踵を返す。
は追ってこなかった。
ただ、その場で深く頭を下げたまま、動かなかった。
直哉は襖を乱暴に閉めると、そのまま畳にどかりと腰を下ろした。
部屋の静けさが耳障りなくらいに広がる。外の音などどうでもいい。ただ、自分の苛立ちだけが胸の奥でぐるぐると渦を巻いている。
殴った感触が、まだ手の甲に残っていることが何より、腹立たしかった。
「全部クソや…」
誰に向けた言葉なのか、自分でも分からない。
腹の底から込み上げるのは、苛立ちだけじゃない。
下腹部に熱が集まり、じわりと疼き始める。
殴ったことへの後悔? そんなものはない。
人を思いやる心など、元々持っていない。
息が少しずつ荒くなる。
無意識に右手が帯に伸び、きつく締められた布を緩める。
下着ごと引き下げると、すでに熱く張り詰めた自身が、ぴくりと跳ねた。
先端から透明な雫が零れ、腹に落ちる。
「は……」
吐息が漏れる。
目を閉じても、脳裏に浮かぶのはの顔だ。
何度も搾り取られた記憶。
膣の、甘く熱くねっとりとした締め付け。
抜き差しするたびに絡みつき、離すまいと吸い上げるような蠢き。
なのに今、俺はイケない。
いくら握って擦っても、頂点に届かない苛立ちが募る。
「あ……なんやねんっ……」
右手が根元を握り、荒々しく上下に動かす。
速く、強く。
親指で先端を擦っても、びくりと腰が跳ねるだけ。
快感は来るのに、決定的なものが足りない。
苛立ちが、余計に熱を煽る。