第2章 弍
聞いていた時間より随分と早い夕刻より前、任務から戻るなり、玄関先で出迎えたの腕を無造作に掴み、直哉は足早に自室へと彼女を連れ込んだ。
背後で障子が勢いよく閉まる音など気にも留めない。
彼の瞳には、朝から募らせていた独占欲と、任務中に嫌というほど頭をよぎった彼女の肢体への渇望が混ざり合い、どろりとした熱を帯びている。
着物を剥ぎ取る手つきは乱暴で、しかしどこか縋るような危うさを含んでいた。
「……はぁ、やっと戻ってきたわ。
ほんまに……俺をどれだけイライラさせたら気が済むん? 任務の間中、ずっと自分のあの顔がチラついて、おもろない雑魚相手にするんが苦痛でしゃあなかったわ。」
布団を敷く時間すら惜しむように、直哉はを畳の上に押し倒した。
剥き出しになった彼女の白い肌が、部屋の薄明かりの中に浮かび上がる。
彼はその首筋に顔を埋め、深く呼吸を繰り返しながら、獣のような低い声で囁いた。
乱暴に唇を奪うその仕草は、愛情というよりは「所有権の再確認」に近い。
「……『お帰りなさい』やろ? 挨拶もさせへんくらい、俺が余裕ないと思っとん?
……正解や。今の俺は、自分を壊したくてたまらんのや。」
声を発する暇さえ与えないように、直哉はの唇を強く噛むように塞ぎ、彼女の反応を確かめるように片手でその細い腰を強く抱き寄せた。
畳の冷たさと、彼の身体から発せられる異常なまでの熱が、の肌の上で混ざり合う。彼は一度唇を離すと、薄ら笑いを浮かべながら、しかしその瞳には逃れられない執着を宿して彼女を見下ろした。
「……さぁ、見せてや。俺を狂わせた、その『深淵』を。……今夜は自分、一歩も外に出さへんからな。……泣いて、縋って、俺の名を呼び続け。……それが、俺だけの『道具』としての務めやろ?」
忙しなく言葉を並べる直哉の襟元を緩めながら、は囁くように返事をした。
「もちろんです」
その声だけで、脳がピリピリと音を立て始めているのを直哉は感じてしまう。
負けたくないという思いで、彼女の体に手を伸ばすが、それにもまた苛立ちを感じてしまう程、今の彼に余裕はない。