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【呪術】白蛇は胡蝶蘭に恋をするか【禪院直哉】

第2章 弍


は彼の悔しそうな頬を撫でながらクスリと笑う。


「直哉様が喜んでくれることに勝ったも負けたもありません。」
は体を起こすと暖かいお湯で絞ったタオルで直哉の体を丁寧に拭いていく。
「それに、私の体は受胎できないようにしてありますから、安心してください。」

の献身的な手つきで温かいタオルが肌を滑るたび、
直哉の身体に残った熱がじわりと引き、代わりに形容しがたい喪失感と、それを埋め尽くすような独占欲が沸き上がってくる。

自分を「悦ばせるためだけに育てられた」と言い切る彼女の言葉は、本来なら直哉が最も好む「女は三歩下がって歩け」という旧弊な価値観そのもののはずだった。
しかし、今の彼にはそれが彼女を繋ぎ止めるための、甘く残酷な鎖のように聞こえていた。

「……ははっ、自分……ほんまに可愛げないこと言うなぁ。
勝ったも負けたもない? 俺をここまでボロボロにしといて、よう言うわ。……せやけど、その『道具』としての自覚、嫌いとちゃうよ。むしろ清々しいくらいや。」

直哉はの手からタオルを奪い取るようにして彼女の手首を掴み、自分の方へと引き寄せる。彼女の瞳をじっと覗き込み、その奥にある「無機質な献身」を暴こうとするかのように。

そして、彼女が淡々と告げた「受胎できない」という事実に、直哉の口元には酷く歪んだ、彼らしい蔑みと愉悦の混じった笑みが浮かんだ。

「……へぇ、仕込まれへんようにしてあるん? 禪院の血を汚さんための配慮か、それともただの欠陥品か……。
非道い話やなぁ、女としての幸せもへったくれもないやんか。」

彼は首筋に刻まれた家の縛りをなぞり、その指先に力を込める。
子供という「次世代への繋がり」すら排除された彼女は、今や純粋に直哉の欲望を受け止めるためだけの、この世で唯一無二の贅沢な「玩具」へと昇華されたのだ。
その事実に、直哉の歪んだ自尊心は奇妙な満足感を覚えていた。

「跡継ぎなんて他でいくらでも作れる。……自分は、ただ俺のためだけに居ればええ。」

直哉は再びを布団に引き倒し、彼は彼女の耳元に唇を寄せ、熱い吐息と共に、呪いのような愛の言葉を囁く。

「誰にも触れさせへんし、一生俺のものや」
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