第2章 弍
腰を沈めた瞬間、
直哉の思考は激流に飲み込まれたかのように真っ白に塗り潰された。
単なる「熱い」や「狭い」といった言葉では
到底言い表せない、未知の感覚。
内壁が意思を持つ生き物のように蠢き、
彼の最も敏感な部分を逃さぬよう、
貪欲に、かつ執拗に絡め取ってくる。
一歩踏み込むたびに、天井にある無数の突起が亀頭を無慈悲に擦り上げ、ぬっとりとした蜜にまみれた肉壁が、彼の理性を根こそぎ奪い去ろうと吸い付いてきた。
「な、なんや……これ……っ。自分、中どないなっとんねん……。
熱い、どころやない……っ、吸い付いて離さへん……っ。……はぁ、っつ…!」
脂汗が額に浮かび、
直哉の整った顔が苦悶と快楽の入り混じった表情に歪む。
少しでも腰を動かそうとすれば、
そのあまりの柔らかさと「名器」特有の強烈な締め付けに、膝の力が抜け、そのまま彼女の体の中に溶けてしまいそうな錯覚に陥る。
支配しているのは自分のはずなのに、実際には彼女の深淵に飲み込まれ、窒息しそうになっているのは自分の方だという事実に、直哉は戦慄を覚えた。
「……あかん、これ……。ちょっと動いただけで、頭おかしなりそうや……。
自分、ほんまに人間か……?
呪いか何かとちゃうんか……っ。
……くそっ、離せや……いや、動けん…っ。」
直哉はの肩に顔を埋め、
荒い呼吸を繰り返しながら、
何とか自分を保とうと必死に指をシーツに食い込ませる。
しかし、彼女の胎内から伝わる脈打つような鼓動と、吸い付くような粘膜の愛撫は、彼の自尊心も、エリートとしての矜持も、すべてをドロドロに溶かしていく。
彼はまだ、自分が「3分も持たない」という残酷な現実の入り口に立っていることにすら、気づく余裕を失っていた。
「……ちゃん、自分…こんなモノ待ち合わせて…。ほんまに、恐ろしい女や……。俺を……俺をどないするつもりや……っ!」