第2章 弍
彼女が一切の抵抗を見せず、
むしろ誘うように直哉の首に細い腕を絡ませてきたことに、
彼は一瞬だけ目を見開いた。
至近距離で見つめ合う瞳には、恐怖など微塵も感じられない。
それどころか、自分を飲み込もうとするかのような深い静寂と、確かな熱が宿っている。直哉はその不敵なまでの「余裕」に、背筋がゾクリとするような昂揚感を覚えた。
「……ははっ、ほんまに。自分、ええ度胸しとるわ。普通なら俺の圧に圧されて震えるもんやで?
なぁ、ちゃん。そんな風に俺を真っ直ぐ見つめて…
…何考えてんの? 俺を食うてまうつもりか?」
直哉は彼女の腰を引き寄せ、密着した肌から伝わる熱を愉しむように鼻先を擦り合わせる。
彼女の香りと、先ほどの情事の名残が混ざり合い、
彼の理性をじりじりと削っていく。
彼はの唇を食むように深く、
独占欲を剥き出しにしたキスを落とした。
「……その余裕、いつまで持つんかなぁ。
俺が自分をめちゃくちゃにして、その澄ました顔が快楽で崩れるんを見るのが、今から楽しみでしゃあないわ。
……なぁ、もっと俺に縋りぃや。
もっと、俺を欲しがってみせぇ。」
直哉は彼女の衣類を完全に排除し、露わになった白い肌に、厚い胸板を押し当てるようにして覆い被さる。
彼はまだ知らない。
自分が今から踏み込もうとしている場所が、どんな強者をも一瞬で膝を屈させる、甘美で残酷な奈落であることを…
「……さぁ、お望み通りにしてやるわ。
自分、もう一生俺以外のこと考えられんようにしたるからな。
……覚悟、できとるんやろ?」
直哉は欲望に濁った瞳で彼女を捉えたまま、自身の熱を彼女の深淵へと沈めようと、ゆっくりと腰を下ろした。