第1章 壱
直哉の目が、湯気越しにの顔をじっと見据えたまま動かない。
濡れた睫毛が一度、ゆっくりと瞬く。
その一瞬で、空気がさらに重みを増した。
「……どんな奉仕、か」
彼は繰り返すように呟き、掴んでいた胸から指をゆっくり離す。
しかし離したわけではない。
ただ、掌を滑らせ、乳房の輪郭をなぞるように這わせていく。
親指が頂を軽く掠めると、の肩が小さく跳ねた。
「さっきまで、よう喋らん子やと思ってたけど」
直哉の声は低く、どこか楽しげだ。
楽しんでいるのか、苛立っているのか、それとも両方なのか。
区別がつかない。
「物分かりがええなぁ」
彼は片手での顎を掴み、顔をわずかに持ち上げさせる。
視線を逃がさない。
もう片方の手は、なおも胸に置かれたまま、ゆっくりと揉みしだくように動いている。
は唇を軽く噛み、声を抑えるように息を吐いた。
「……お望みのままに」
言葉は丁寧だ。
けれど声の端が、かすかに震えている。
直哉は小さく鼻で笑う。
「望みのまま、ねぇ」
彼は顎を掴んだ手を離し、今度はの首筋に指を這わせた。
刺青に沿って、ゆっくりと下へ。
鎖骨をなぞり、胸の谷間へ。
「ほな、まずは……」
直哉は言葉を切り、の腰を引き寄せた。
膝の間に座らせていた身体を、もう一段深く自分の腿に密着させる。
熱い肌と肌が触れ合い、湯の音だけが響く。
それだけで何をすればいいのか理解できた。
の視線が、ゆっくりと下に落ちる。
一瞬、息を呑む
けれどすぐに、教えられたように視線を上げ直し、直哉の目を見つめ返す。
返事はしなかった。ただ、静かに口を開けて見せると
直哉の口角が、わずかに吊り上がった。
「ええ子やな」
彼はそう言いながら、の髪を優しく、しかし確実に掴んだ。
頭をゆっくりと下げさせる。
は抵抗せず、ただ
ゆっくりと膝を滑らせ、
直哉の腿の間に顔を近づけていく。