• テキストサイズ

【呪術】白蛇は胡蝶蘭に恋をするか【禪院直哉】

第1章 壱


脱衣所で立ちすくんでいると、突然、「脱げ」と言われて、は静かにうなづいた。
一糸纏わな体で浴室に入れば
湿った空気が肌にまとわりつく。

直哉は湯船の縁に腰を下ろしたまま、背中を預け、目を閉じている。
は彼のすぐ傍らに膝をつき、昨日と同じ手順で背中を流し続けていた。
手のひらに石鹸の泡を乗せ、丁寧に、しかし機械的に滑らせる。

そのとき。

突然、濡れた手が前から伸びてきた。
大きく、力強い指がの胸を掴む。

一瞬、息が止まり、驚きは確かにあったが、は身体を引かなかった。
ただ、わずかに指先が震えただけだ。

直哉の低い声が、湯気の向こうから響く。

「世話ってのは、これも含まれてるんやろ?」

言葉に疑問符はない。
確認でもなく、ただ事実を突きつけるような言い回し。

はゆっくりと顔を上げた。
視線だけをそっと持ち上げ、直哉の顔を見上げると
冷たい視線が絡んだ。

静かに、は直哉の膝の間に座ると、太ももにそっと両手を置く。
濡れた指先が、彼の逞しい肌に触れ
熱い湯の温度と、直哉の体温が混じり合う。

悟られぬよう小さく息を吐いてから、
は静かな声で、しかしはっきりと尋ねた。

「直哉様は……どのような奉仕をお望みでしょうか」

声はほとんど震えていない。
教えられた通りの、従順な響き。
けれどその瞳の奥には、わずかな緊張と、抑えきれない何かが揺れている。

湯気が二人の間をゆっくりと流れ、
直哉の閉じていた瞼が、ようやくゆっくりと開いた。

彼の視線が、真正面からを捉える。

その目は、さっきまでの鋭さとはまた違う。
もっと深く、もっと暗く、もっと貪るような色を帯びていた。
/ 109ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp