第4章 残る想いと結ぶ誓い
寝起きの不機嫌な顔をしている直哉を仁美は冷たい目で見ていた。
「……よう、女の匂い残したまんま来れるな、あんた。」
声は低く、怒気を含んでいた。
直哉は瞬きをし、自分の胸元に付いた紅に気づくと、ほんの一瞬だけ目を細めた。
(……さっきまで悟くんがおったのに、どの口で言うてんやろなぁ。)
そう思いながらも、その言葉を決して口には出さない。
代わりに、ジトッとした半眼で仁美を見つめ返した。
「……せやけど、お前……つねるとこ違うやろ……ほんま……。」
つねられた箇所を撫でながら直哉は呆れたように言った。
直哉は布団の中からむくりと起き上がった。
髪は乱れ、寝起きの不機嫌さがそのまま顔に残っている。
「……風呂、入るわ。」
短く言い捨て、立ち上がる。
仁美はジロッと睨み上げて、棘を隠そうともしない声で返した。
「風呂ぐらい、女んとこで入ってから来てや。……匂い、きついわ。」
仁美の言葉に直哉は着物を脱ぎながら肩越しに答えた。