第4章 残る想いと結ぶ誓い
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甘い白粉の匂いが、鼻腔いっぱいに広がった。
仁美はうっすらと目を開け、ぼんやりと天井の灯りの残り火を見つめる。
……甘すぎる。
これは、舞妓や芸妓の肌につく濃い白粉の香り。
ゆっくりと体を動かすと、すぐ目の前に温かい気配があった。
気づけば、布団の中に直哉が入り込んでいる。
直哉の腕枕で、彼と向かい合うように寝ていた。
その顔は、寝ている時だけ見せる、年相応の無防備な顔だった。
仁美は、一瞬だけその直哉の顔に見惚れてしまう。
しかし、視線がふと直哉の胸元に落ちると、乱れた着物の襟元。
そこには、白粉と紅がうっすらとこびりついていた。
――はっきりと残された女の匂いと色。
その瞬間、胸の奥がぶすりと刺された。
仁美は苛立ちのまま、直哉の胸元を、指で思いっきりつねった。
「……っ、いったぁ!」
直哉の眉が跳ね上がり、目がぱちりと開く。
直哉を睨みつけている仁美と目が合う。