• テキストサイズ

【呪術廻戦】禪院直哉と返命の妻【R指定】

第3章 愛と義務


「僕がここにいるのは……仁美の“家”のためじゃない。五条家のためでもない。僕だけは、“仁美”との縁だけでここに来てる。」




悟の言葉が湯気に落ちた瞬間、仁美の胸の奥で、消えかけていた灯がふっと明るくなった。

胸の奥で何かが息を吹き返した。




仁美は悟の方をほんの一瞬だけ見る。

その瞳は、さっきまでの濁りが嘘のように透明だった。




震える息のまま、仁美は湯縁の方を指差す。

「……悟くん。うち、あの着物にする。」





悟の視線がそちらへ向けられる。

部屋に飾られた着物の中、黒地に藤の花が静かに咲いていた。




悟はその柄を見て、ほんの少しだけ目を細めた。




「……藤は気高さと折れない心の象徴。黒は……決意の色、仁美が戻るなら、それ以上にふさわしいものは無い。」





悟は立ち上がり、湯に沈む仁美の傍へ膝をつくと、湯をすくってそっと肩へ流す。

乱れた髪を整えるように指が湯面をすべらせる。




「……大丈夫。ちゃんと綺麗にしてあげるから。」
/ 95ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp