第1章 壊れぬ妻と飽きない夫
「おーい、仁美。」
直哉だった。
「……女、帰したん?」
「ん? あぁ。帰らしたで。なんや、まだ居ってほしかったん?」
仁美 は薄く笑った。
「別に。聞いただけ。」
「せやろな。」
直哉はそのまま、当然のようにベッドの反対側に入り込む。
夫婦の寝室は別だが、こうして突然入り浸ることは珍しくない。
自分の頬に肘をついて、横たわる 仁美 を見下ろす。
「今日の仕事、どうやった?」
「……会合がひとつ。禪院家の依頼が二件。ひとつは返命使ったから、ちょっとしんどい。」
「ほーん。それで倒れへんの、偉いな。」
「慣れてるから。」
「ほんならええわ。無理したら死ぬしな。」
そう言いながら、直哉は自分の寝心地の良い位置を探すように、仁美 の肩へ軽く手を置く。
「直哉こそ、もうちょいちゃんと休んだら?」
「俺は元気やで。女抱いても疲れへんタイプやしな。」
「……はいはい。」