第2章 奪われた初恋と手に入れた女
「悟くん。女はな、使えんかったら“産む”役目があるだけや。」
悟の表情が一気に険しくなる。
「……は?」
「でもこの子は違う。返命と縁火、二つも持っとる。実家は金持ちで、話も通りやすい。禪院の嫁としては出来すぎや。」
直哉の視線が、満足げに仁美の全身をゆっくりなぞる。
直哉と仁美の目線が重なると、直哉はゆったりと微笑んだ。
「ええやん。仁美からの返事は、もうもろてるねん。俺がもらうわ。」
悟の拳が震えて、横にいる仁美を見た。
仁美は真っ直ぐ直哉を見ていて、悟と目を合わせようとしていない。
「……仁美。本当にこれでいいの?」
初めての恋が、奪われまいと必死に手を伸ばしてくるように見えた。
最後のなにかを掴むような悟の視線に、仁美はゆっくりと目を伏せた。
その横で直哉は、何もかも分かったような顔で首を傾ける。
「悟くん、諦めや。仁美は禪院の女になる。もう決まってる話やねん。」