第2章 奪われた初恋と手に入れた女
直哉は悟を見て、にやりと笑う。
「悟くんも久しぶりやね、まだ仁美の側におるんやな。……さすがに今日は無粋やで?なんの用や?」
悟は直哉の挑発にもまだ冷静だった。
「別に?勝手に決められるのが嫌だから着いてきただけ。」
その言葉は仁美は絶対に直哉を選ばないと言っている。
直哉が仁美に何かしないか心配できたのだろう。
見え隠れする悟の心情に、直哉の目が細くなる。
「へぇ。決めるんは禪院家やで?」
「本人の気持ちは?」
直哉はふっと笑い、畳に片手をついた。
「仁美。俺の嫁になるんやて。話はついてるはずやけど。」
悟が来る前に仁美の家からの返事は聞いていた。
つまり今日、納得していないのは悟一人だ。
そんな立場なのに堂々と仁美の側にいる悟にも。
それを許す仁美にも腹が立つ。
「勝手に決めんなよ。仁美は物じゃないんだよ。」
直哉は悟に、あきれたような長い息を吐いた。