第10章 帰還の契りと見えぬ手
目は口ほどに物を言う、とはこの事だろう。
ただ黙って直哉を見る仁美に、彼に焦りの色が見え始めた。
「仁美。黙っとらんと、なんか言えや。」
無視されているのが苛つくのだろう。
その口調は強かった。
「… うち、まだ心の整理ついてへんのよ。」
少し目を伏せて仁美は言った。
「まだ帰る気あらへんのか?」
仁美の言葉に直哉は腰を上げると、仁美の隣に座って彼女の顔を見た。
「仁美。俺がこんだけお前の機嫌取っとるの、分かっとるやろ?」
直哉は仁美の手を握りながら言った。
確かに、彼がわざわざ迎えに来ているだけで、すでに折れているようなモノだった。
直哉は握っていた手を離すと、仁美の頬に触れた。
「あんだけ機嫌取っとったのに、黙って消えるとかおかしいやろ。」
直哉は仁美の顎を掬い上げると、首元にある赤い痕を見つけた。
五条悟の宣戦布告の痕に、直哉の目は一瞬歪んだ。
「……しかも、消えた先でまた悟くんおるとか、ほんま頭おかしなるわ。」