第10章 帰還の契りと見えぬ手
直哉の目線の先に、悟が付けた痕があることは分かっていた。
だけど仁美は一切の動揺を見せずに淡々と言った。
「…ただの悟くんの嫌がらせやよ。分かっとるでしょ?」
「…そんなん分かっとるわ。」
そう言って直哉は仁美の髪を掻き上げた。
そして悟が残した痕に唇を押し付ける。
ピクッと仁美の眉が動いたのを確認して、直哉は唇を開き口の中で仁美の皮膚を吸い上げた。
「はっ…エグい痕付いてるで。」
「…………。」
仁美は反応しないように我慢しているようだった。
ギュッと膝の上で握られている拳を見て直哉はフッと笑った。
「なんや。ずっと我慢大会でもしとんのか?」
耳元で聞こえる直哉の声がくすぐったくて、仁美は顔を顰めた。
肌に触れることさえ出来たなら、仁美から声を出させることなんて簡単なのだ。
ちゅっと首筋にキスをされて、その唇は肌に触れながらゆっくりと仁美の唇まで向っていった。
「…直哉。」
仁美は直哉の口元に手を置き、彼の行動を止めた。