第10章 帰還の契りと見えぬ手
(はぁ……ほんま、死んでくれへんな。)
悟にぶつけられない怒りは、部屋の中の仁美に向かった。
バンッと大きな音を立てて、重たい扉が開いた。
中に居た仁美は、扉を開けた直哉をチラッと見た。
足音から怒りが伝わってきたので、彼が怒り任せに扉を開けるのは分かっていた。
「…………。」
仁美が黙って直哉を見ていると、ズカズカと部屋の中に入ってきて、向かい合っているソファにドカッと座った。
ガンッとテーブルに足を置いた直哉を見て、仁美は目をすわらせて直哉を見る。
「なに勝手に家出とんねん。」
「…………何しに来たん?直哉。」
迎えに来るなら謝るかとも思ったが…。
余計に怒らせてどうするのだろう。
「俺がわざわざ迎えに来たんや。さっさと帰るぞ。」
「…………。」
まるで帰るのが当たり前のような直哉の態度だった。
仁美はそんな直哉をジッと見て、黙ったままカップを持ってお茶を一口飲んだ。
「…… ほんまに帰らん気なんか。」
「…………。」
その直哉の言葉には苛立ちがハッキリと現れていた。