第10章 帰還の契りと見えぬ手
しかし、ここが家の敷地で、悟が仁美を囲っている訳ではないことが、少しだけ直哉に余裕を持たせた。
勝手に悟が仁美に付き纏っているだけだ。
そう思い直して、怒りを鎮めることに専念する。
「なんや悟くん。ほんまに仁美の愛人にでもなりたいんか。」
怒りを抑えるため息と一緒に言葉を吐いて、直哉は悟を牽制した。
「……へぇ……。」
その直哉の表情を見て、悟は彼の変化に気が付いた。
仁美を迎えに行っても差し出してきそうな男だったのに、どうやら迎えに来るくらいの執着があるようだ。
「まぁ…愛人でもいいけど…、本音は早く返して欲しいよね。」
悟は一歩前に踏み込んだ。
直哉が居る限り、仁美に触れられないのは事実だ。
久しぶりに仁美に会って、それが長く我慢出来ないことを悟自身よく分かった。
「…… 時期来たら返したる言うとるやろ。それまで大人しゅう出来へんのか。」
「…ああ…本当に長くかからなそうだな。」
悟は直哉の言葉に口角を上げると、そのまま彼の脇をすり抜けて歩いて行った。