第10章 帰還の契りと見えぬ手
「…あーあ…、つまんねぇ…、邪魔すんなよな。」
悟はそう言ってソファから腰を上げた。
そのまま部屋を出て行く悟を、仁美はただ見送った。
スリッと悟が触れた首元に手をかざした。
少しヒリヒリして、そこにどんな痕があるのか確認しないでも分かった。
悟はそのまま部屋を出ると歩き進めた。
無粋な来客は我が物顔で勝手に入って来るのだろう。
家でそんな真似が出来るのは悟だけだった。
今じゃこうして堂々と現れる……。
「あ?」
この男が目障りでしょうがない。
悟は正面に立つ直哉に、目隠しの奥で目を歪ませた。
「なんや…。またおるんか…。」
悟を確認すると、直哉は飽き飽きとした顔で言った。
もちろん悟だって、願わくばこの顔を見たくない。
「…まぁ…直哉くんより付き合い長いしねぇ。」
思わせぶりな悟の言葉に、分かりやすく直哉は顔を顰めた。
どこにいても仁美の側から離れない。
禪院家を出た仁美の居住先で悟を見かけるのは、今まで以上に腹の立つことだった。