第10章 帰還の契りと見えぬ手
こんなやり取りは…。
夫婦の直哉よりも恋人のようだと仁美は思った。
そんな二人の空間が、乾いたドアのノックの音で終わりを告げた。
仁美と悟が二人で部屋に篭っている時に、こうして邪魔が入るのは初めてだ。
そこら辺は悟がしっかりと教育してから。
その暗黙の了解を破って、邪魔をしにきたのだから、原因はすぐに分かった。
禪院直哉が来たのだろう。
それは仁美もすぐに理解した。
禪院家を出て1週間。
前は1週間程度仁美が屋敷に居なくても気にも留めなかった男だ。
その心境の変化は仁美の関心を買った。
仁美の関心が離れたのが分かったから、悟は苛立ちを表した。
「!!」
グッともたれていた仁美の首を掴み、そこに自分の唇を押し付けた。
ジクッとした小さな痛みの後に。
仁美の首筋に悟が付けた赤い痕が残った。
その痕を確認して、悟は目隠しの奥の目を細めた。
「……………。」
怒りも呆れもあり、仁美はそんな悟を呆然と見るしか出来なかった。