第9章 揺らぐ灯と交わらぬ影
「…………。」
直哉は白椿の言葉を聞きながら、チラリと彼女の白い手を見た。
「!」
その手を掴むと、白椿を畳の上に組み敷いた。
距離を縮めて赤い紅の唇がすぐ目の前にある。
その赤い唇を親指でソッと撫でた。
「ええこと言うやん。ほな、お前が俺の子産んで嫁になるか?」
皮肉混じりのその笑みに、白椿もまた笑みを崩さない。
「うちは冗談でも、よう受け取りまへんえ。」
白椿はその細い指で直哉の顎を軽く押した。
初めから直哉にその気は無かったので、白椿の添えるような手でも、簡単にその距離を離した。
「ほな用ないわ。さっさと出てけ。」
直哉はさっさと体を起こすと、あしらうように手を振った。
『産むんは誰でも構へん。俺の意思やない。当主になって家継ぐ。それだけや。』
その気持ちに嘘はない。
自分の子を産むのなんて誰でもよかった。
(……なんであのアホは分からんねん。)
産むのなんて誰でもよい。
だけど嫁として側に置いているのは仁美だけだ。
「なんでそれで満足せんと、勝手に消えるんや。」