第9章 揺らぐ灯と交わらぬ影
直哉に愛されていないその事実だけに涙が出る。
だってそうだろう。
愛していたら、他の女と子供を作ろうなんて考えるわけがない。
「風呂はな、服着て入るもんやないぞ。」
直哉はそう言って仁美の服を脱がせていく。
湯を吸った重たい服を脱がせながら、仁美の涙を手で拭った。
全ての服を脱がせると、直哉は仁美にキスをした。
まだ流れる涙も唇で拭うと、仁美の頬を両手で包んだ。
直哉の手を思い切り払いたい気持ちが強いのに。
同じ位、この手に触れられたかった。
「泣く女抱く趣味なんて、俺にはないんやけどな。」
せっかくなら楽しむ快楽が好きだ。
泣いている女を宥めてその気にさせるなんて面倒なだけだ。
なのに仁美にはいつも宥めている。
怒っている時も泣いている時も。
仁美の手が背中に回り、絡まる舌に応えるまで。
何度も何度もキスをして、その小さな体を抱き締める。
そんなことを飽きもせず繰り返すのは仁美だけだ。
「ほんま、お前は面倒な女やな。」