第9章 揺らぐ灯と交わらぬ影
しがみ付いている肩が震えて嗚咽が聞こえるので、泣いているのは間違い無い。
直哉は支えていた腕を撫でるように背中に回した。
「俺にどうせぇ言うねん。」
呆れた声で吐き捨てるようだった。
仁美は泣いている顔をさらに直哉の胸に押し付ける。
「……うち、こんなん嫌や。直哉はうちの旦那やのに、他の女に触れたらあかん。」
しゃくり声をあげながら、仁美はそれでも強く直哉を責めた。
「……最初から言うとったやろ。禪院家の女は、家守ることだけ考えとけ。」
「嫌なもんは嫌や!!」
その後は声を張って泣くので、直哉は仁美から顔を離した。
ほな、もう辞めるか?
そんな言葉は出てこなかった。
代わりに直哉は仁美の体を抱きしめた。
泣いている子供をあやすように。
「ほんま、お前は気ぃ強いな。」
仁美の頬にスリッと顔を触れさせて、耳元で直哉の声が聞こえる。
今直哉は自分に呆れていると分かっているのに、仁美は泣くことを止められなかった。
浮気されたことが悲しいのでは無い。