第9章 揺らぐ灯と交わらぬ影
かなり荒げて廊下を歩いた。
どうせ直哉は風呂場に居ると分かっていたので、彼を探すことはしなかった。
バシンッと大きな音を立てて脱衣所の扉を開けると、服を脱いでいる途中の直哉が振り返った。
その顔は心底うんざりしていた。
「お前ええ加減にせぇよ。まだ文句あんのか。」
直哉は持っていた服を仁美に投げつけて、風呂場に入っていく。
仁美は直哉の服を床に投げると、そのまま勢いよく後ろから直哉に抱き付いた。
「おまっ!アホか!」
浴室で体のバランスを崩して、直哉は咄嗟に仁美の体を庇った。
そしてそのまま二人で湯船に落ちる。
ドボンと二人の体が湯にぶつかり檜風呂の良い香りが浴室に広がった。
「……………。」
ポタポタと前髪から雫が落ちてきて、直哉は腕の中の仁美を見た。
仁美は直哉の胸に顔を押し付けて、手は彼の背中にしっかりと回されている。
この女、ほんまろくなことせぇへんな。
しがみ付いて離さない仁美を、どうしたものかと直哉はため息を吐いた。