第9章 揺らぐ灯と交わらぬ影
「…私の意思じゃありません…。」
女の言葉を聞いて、仁美は皮肉めいた笑みを吹いた。
どいつもこいつも自分の意思じゃないって。
泣きたいのはこっちだ。
「あんたが泣くほど嫌がった相手な……それ、私の旦那なんやけど。」
女は仁美の言葉を聞いて、ハッと顔を上げる。
泣き腫らした目と合った時に、仁美は続けて言った。
「……あんたの事情は知らん。でも来た以上、ちゃんとしてもらわんと。旦那の機嫌、私が取らなあかんくなるやろ。」
直哉は随分と根気強く耐えたようだ。
面倒だったらそのまま部屋から出るような男が、泣いている女をあやしながら最後までしたのだから。
まるで仁美が抱かれたような彼女の姿に、言いようのない怒りが込み上げるだけだった。
「あの人はこの部屋には来させへんから。ゆっくり支度して、勝手に帰ってええよ。」
仁美は女中に部屋を綺麗にするように言いつけると、そのまま部屋から出て行った。
その頃には涙を堪えることが出来て、それでも怒りは収まらず、その感情はやはり自分の旦那に向かう。