第9章 揺らぐ灯と交わらぬ影
そんな直哉の腕を掴む仁美の手は震えていた。
「あんた、何したん……あの人、泣いとったし、震えとったよ。」
それに自分の体を守るように丸く抱き締めていた。
直哉に聞きながら仁美の眉間に皺がよった。
そんな仁美を見ながら、直哉もまた心底うんざりした顔をする。
「お前……自分の旦那を、性犯罪者やとでも思っとるんか?」
直哉は仁美の手を強く払って続けて言った。
「俺は女に手ぇあげることはあっても性的快楽のためやない。ムカついたから手ぇあげるだけや。気に入った女やからと手ぇ上げて縛ってどうこうする趣味もないわ。」
そして体を仁美から逸らしてまた歩き出す。
「お前、俺をなんや思っとるんや。」
直哉の声は心底仁美に軽蔑の色を含んでた。
仁美はその言葉に一瞬体を強張らせた。
仁美自身、直哉との情事で酷いことをされたわけでもない。
実際直哉自身女性に困っていることも無く、無理矢理泣いている女を抱くとは考えづらかった。