第9章 揺らぐ灯と交わらぬ影
部屋から出て来た直哉は、髪も服も乱していて、一目で情事の後だと分かった。
その事実に、仁美の顔が一瞬で歪んだ。
仁美の顔が険しくなった事に直哉は目を細める。
「…帰っとったんか。」
そうため息混じりに顔を俯かせて髪を掻き上げた。
文句の一つも言いたいのに、仁美は言葉が出なくて、直哉の説明を待った。
フラッと直哉が動くと、そのまま仁美の横を通り廊下に出た。
そのまま歩いて行く直哉の後姿に思わず彼を呼んだ。
「直哉!!」
仁美に呼ばれて直哉は一瞬歩くのを止めた。
また大きなため息を吐いて彼の肩が大きく上下した。
「…中、任せるわ。」
それだけ言うと直哉はまた歩き出した。
中とは…。
この部屋の中のことだろう。
「……はっ…。」
仁美は乾いた笑いを吐いた。
この男は妻に他の女の世話をしろとでも言うのだろうか。
まだ情事の後の空気が残る部屋は、とてつもなく気持ち悪くて不愉快だった。
それでも仁美はゆっくりと部屋の中を見た。