第8章 禪院の道具と女の本音
「?」
戸惑っている顔をして直哉の体を見ている仁美を、直哉はしばらく見ていた。
「!」
指が触れていた胸元に仁美はゆっくりと唇を当てた。
ちゅっちゅっと何度も唇を当てて、他の女の匂いを消すように仁美の匂いが直哉の体に付けられる。
仁美が自分から直哉の体に触れるのは初めてのことだった。
拙い唇はくすぐったく、それが快楽に変わることは無い。
だけど必死に自分の痕を付けている仁美の姿に、直哉の背中にゾクッと刺激が走った。
唇が鎖骨に触れて舌で舐められた時に、流石にそのくすぐったさに直哉は仁美の髪に指を絡めた。
唇を離すように仁美の頭を引くと、自分を見上げる仁美と目が合った。
恥ずかしさで顔を紅潮させて、その瞳は潤んでいる。
自分を見下ろしている直哉の目を見ながら、震えていた唇が開いた。
「……なぁ……。どうしたらうちで満足できる?」
潤んでいた瞳にさらに涙を溜めていた。
泣かせようとはしていたが、思っていた涙と違った。