第8章 禪院の道具と女の本音
「…………。」
何も言わず不安そうな顔を向ける仁美に、直哉はもう一度キスをした。
仁美の頬を手で撫でて、止められた行為を再開する。
不機嫌だったくせに、仁美に触れる直哉の手は乱暴では無い。
口も悪く悪態をよく吐くが、ベットの中ではその態度もどこか柔らかかった。
だから仁美が言葉を紡がなかったのは、直哉が怖いわけでは無い。
心の中の声を出さないのは、それが直哉に響かないと分かっているからだ。
「仁美。俺の世話するんがお前の役目やろ。服、脱がしてみ。」
ちゅっと直哉の唇が離れて、情欲を含んだ眼差しで見下ろされた。
仁美は直哉が望んでいることがなにか分かるから、首を横に張った。
「無理。先にお風呂入って。ほかの女の匂い、耐えられへん。」
顔をそっぽに向けて、仁美は言った。
直哉は横に向いた仁美の顔を掴んで、自分の方に向けさせる。
「風呂は後や。どうせ、また汚れるんやから。」
そう言って仁美の手を取ると、「ほら」と言って彼女の手に自分の着物を触れさせる。