第1章 壊れぬ妻と飽きない夫
背筋を伸ばし、どこか緊張した表情で。
そこへ、一人の少年が扉を開けて現れた。
「はじめまして。五条悟です。」
ぶっきらぼうで、なにか不満がありそうな顔の少年。
白髪の青い目が印象的だった。
仁美 は思わず目を瞬いた。
「……こんにちは。仁美です。」
悟は仁美を見ると目を細めて、すぐに距離を詰めてきた。
「なんか体調悪いって聞いたけど、大丈夫?あ、触ってみてもいい?」
「え……。」
躊躇する間もなく、悟は 仁美 の手を取った。
その瞬間悟の表情が変わった。
「……あぁ、これ。なんか“吸ってる”ね。呪力。そりゃしんどいな。」
「吸って……?」
「うん。よくわからないけど、周りの呪力が全部 仁美 に入ってる。そりゃ体調悪くなるよ。」
悟は子どもらしさと天才の感性が同居した顔で、眉をひそめながら続けた。
「でも……大丈夫。俺が側にいれば、多分軽くなると思う。」
その言葉は、奇跡のように本当だった。