第7章 禪院と事情
仁美は布団の上で小さく体を丸めた。
直哉は頬に触れていた手を滑らせて、どこを触っても熱を放っていることを確認する。
「なんや……ほんまに具合悪そうやな。」
仁美はもう返事をしなかった。
目を閉じたまま浅い呼吸を繰り返すだけで、指先にも力が入っていない。
直哉は一瞬だけ動きを止めてから手を離した。
それ以上触れずに立ち上がり、黙って身支度を始める。
着物を整え、帯を締め、袖を払う。
背後では、仁美の気配がほとんど動かなかった。
整え終えると、直哉はベットのそばに立ち、もう一度だけ仁美を見る。
「……しばらく部屋から出んと休んどけ。」
それだけ言って、直哉は部屋を出た。
襖が閉まる音がしても、仁美は体を丸めたまま、目を閉じ続けていた。
ー
ーーー
ーーーー
仁美は直哉の言う通り、しばらく自分の部屋から出なかった。
そうして数日が過ぎる頃、直哉の屋敷の中で、ひそひそと噂が立ち始めた。